はじめに
「私は人が苦手。興味もありません。」・・・でした。
30年以上近く営業と育成の仕事をしてきましたが、エニアグラムを知る前はどうやって人とコミュニケーションをしていたやら。人とのやり取りにくたびれはてていたあの頃。笑うことがしんどくて顔が筋肉痛になっていたあの頃。本当にしんどかったです。だからこそ、ここまで自分を生きやすくしてくれたエニアグラムには感謝ばかりです。
世の中には、聴き方、話し方をはじめ多くのコミュニケーションスキルが存在します。エニアグラム・ワークショップは、そういったスキルを学ぶことが目的ではありません。コミュニケーションの基本には、技術や相手を思いやることの前に大前提があります。
それが、「自分を知る」ことです。
人は十人十色と言いますが、人は自分が思っている以上に自分とはちがいます。そして思っている以上に自分も他の人とはちがうのです。そのことを、自分自身でさえ気付かずに「どうしてだろう?」「なんでなんだろう?」と、悩んだり、イライラしたり、不安になったりした経験があるひとは少なくないのではないでしょうか。
人は生まれ持ったそれぞれの気質があります。その気質は、生涯変わることはありません。
エニアグラム・ワークショップの目的は、まず、「自分が何者であるかを知る」
こと。自分を受容し、許容し、承認することです。その上で、「他者が何者であるか」に歩み寄り、他者を受容し、許容し、承認することができたら、自分とも他者とも新たな視点からのコミュニケーションを始めることが可能になります。
自分の気質の良いところを活かし、他のひとの気質の良いところを学びながらのコミュニケーションは、自分が心から望む人生を育んでくれると思います。
「私はひとが大好きです。観察することでたくさんの発見や学びがあります。」
エニアグラム・ワークショップ。ぜひ楽しんで「知る」を深めてください。
わたしたちの個性とは
よく、「個性的ね」とか「わたしの性格は」と言葉を交わすことがあります。では、「個性」と「性格」は同じものなのでしょうか?そしてエニアグラムが扱う根本である「気質(エゴ)」とはいったいなんのことなのでしょう?
今あるわたしたちが「性格」と呼んでいるものは、幼い頃からこれまでの様々な経験や体験によってつくられてきた後天的なものです。
「気質(エゴ)」は先天的に生まれ持った生涯変わることのない自分そのものです。
わたしたちは、生まれて間もなくから本来の自分で生きることが難しくなります。なぜなら、生きていくためにだれかの言うことを聞かなければならないからです。
だれの言うことを聞かなければならないの?
育ててくれる人、お母さんです。おっぱい飲みなさい。おむつ替えるわよ。ねんねしなさい。あやされ叱られ言うことを聞かされながら、お母さん色に少しずつ染められて大きくなります。
そして幼なじみや保育園・幼稚園に行くようになると、そのお友達とうまくやって行くためにまた本来の気質で足りない何かを埋めて成長します。小・中・高・大学や部活動、習い事や塾で出会う新しい環境でさらに成長し、恋愛や就職や結婚でまた足りない何かを埋めて出来上がってきたのが今の「性格」。
その「性格」と持って生まれた「気質」の両方を併せたものが、わたしたちの「個性」なのです。
9つのタイプ(気質)
ここでは9つのタイプをざっと紹介します。
タイプ1〔生真面目な人〕
口癖:完全に、完璧に、絶対に、〜であるべき、〜でなければならない
タイプ1の人は、ものごとが完全な状態であることを願い理想を追求しています。欠けていることや間違えなが目に付き、こうあるべきという自分のルール(基準)に従い正そうとします。
不誠実(正しくない)と思うことに憤りを持っています。幼い頃から親に注意される前に自らきちんとしようとします。車内で携帯通話している大人に対して小さな子が注意をすることもあります。
このタイプにとって、試験の点数は85点99点であっても不正です。正しさは100点のみ。正しくあるために常に緊張し歯を食いしばり、夜間歯軋りする人も多く、奥歯が擦り減る人もいます。
祖父はこのタイプでした。本人もピシッと緊張感。周りもその緊張感を感じていました。
タイプ2〔サポートする人〕
口癖:いいじゃん、なんかそういう感じ、感謝、ありがたい
タイプ2の人は、人助けを誇りとして人に接し、困っているひとに手を差し伸べます。常に、どうしたら目の前の人がよろこんでくれるかにアンテナが立っています。それが伝わるからか、とにかく道を聞かれる。知らない人から声をかけられる人が多いです。
他の人が必要としていることには敏感ですが、自分の欲求に鈍感な方が多いのも特徴。
ストレスが強くなると、わがままになり自分の意見や親切を押しつけがちです。通常は、親切でとてもフレンドリーな世話焼きさんです。訪問時に食べ物を持参することが多く、いただき物は倍返しする方も多いです。
タイプ3〔達成する人〕
口癖:効率、スピード、ペイ、ウィンウィン、成功
タイプ3の人は、成功を求めチャレンジし続ける「やり手」タイプ。タレントやモデルのように、スタイルや見た目も垢抜けている人が多いです。
高い目標をかかげ達成することを常にイメージしています。デメリットを避け、有能である自分を演出します。成果や結果を出せる自分であることがモチベーションとなります。
物事を手際よくこなす器用さと、その自分を磨くための努力を惜しみません。
成功や評価を求め過ぎて、他者を利用したり道具として扱う野心むき出しの自己中人間になることもあります。
タイプ4〔自分らしさを大切にする人〕
口癖:思い、感動、心、よくわからない、失礼
タイプ4の人は、誰かと同じであることを嫌い、自分らしさや特別な自分であることを願います。ドラマティックな生き方を求める個性的な人が多いです。
感受性が豊かでロマンティック。感情を大切にする反面、自分の感情を表に出すことには躊躇があります。特に、幼い頃にだれも自分をわかってくれない、といった経験を持つ人にその傾向があります。
現実世界にいながらその時間のほとんどが妄想の世界を旅しているためほとんど人の話を聞いていませんが、妄想の世界から独自の世界を現実に表現することで、芸術家・音楽家・漫画家・建築家・作家・役者といったオリジナルな世界で活躍するひとの多くにこのタイプがいます。
タイプ5〔分析する人〕
口癖:分析、理論、知識、情報、好奇心、つまりこういうこと?
タイプ5の人は、一人の時間・一人のスペース・人との距離感を必要とします。常に情報を集め分析し論理的に思考しています。感情的な人が苦手で理解に苦しみます。
口数が極端に少ない人や風変わりな学者肌の人も多いです。
一般的に痩せている人が多いのは、頭の中がいつもスーパーコンピュータのように作動していて脳をフル稼働させているからだとも考えられます。
幼い頃から思考の中で生きているこのタイプは、感情表現しないことから表情筋が未発達で顔に表情が出にくい傾向もあります。慎重に客観的に計画をし、自分が納得してからことを始めます。情報収集や分析が得意な反面、人にものを尋ねることを嫌います。
タイプ6〔支え合う人〕
口癖:縁の下の力持ち、安心・安心、誠実、嫌いじゃない、不安、本当に大丈夫?
タイプ6の人は、忠実で粘り強く、所属する組織の中で何をすべきかを常に考え責任や義務を果たそうとします。周りの人との協調性が高く、目上の人への配慮や気配りを大切にします。このタイプはさまざまな場面で潤滑油的役割を担います。部活動では副部長。仕事ではトップをサポートするなくてはならない片腕として責任を果たします。
なにか問題が起きると、まずは「自分の落ち度があったのでは」という不安が小さな怒りに変わることもあります。落ち度を恐れるがために、石橋を叩いても渡らない慎重なところがあります。
普段は和やかでもの静かなのに、車のハンドルを握ると人が変わる人が多いのがこのタイプです。
タイプ7〔楽しみをつくる人〕
口癖:大丈夫、とりあえず、まぁいっか、そうそう、なるほど、楽しい、計画
タイプ7の人がいると、その場の雰囲気が明るくなります。頭の回転がものすごく早く、一度にいくつものことを同時進行できる能力の持ち主が多いです。
苦しいことや辛いことを感じることを避けるために、常に刺激を求めてウキウキワクワク可能性が溢れる計画をたてます。
このタイプからよく聞くのが「生きてるだけで丸儲け!」。何度も聞いたことがあります。逆に、重い話や悲しい出来事を聞くのはなにより苦手です。
常に忙しく、常に考え、常に方向変換を繰り返すこのタイプは、いつも元気に見える外見とは裏腹に疲労困憊しています。
タイプ8〔ザ・リーダー挑戦する人〕
口癖:挑戦、卑怯、やってみよう、やられたらやり返す、勝つ
タイプ8の人がいると、その空間の空気がピシッと良くも悪くも緊張します。弱っている人をほっておけない親分肌と情の深さを持ちます。男女問わず魅力的なひとが多いです。言うなればヤクザの親分や猿山のボス的なザ・リーダー。決断と行動力のある「強い人」です。
このタイプにとって、他者は守るべき家族か、守るべき部下か、あるいは敵。
通常のタイプ8は竹を割ったような潔さがあります。父はまさにこのタイプですが、ホットできる相手には甘えん坊の猫のようになることもあります。
タイプ9〔平和と癒しの人〕
口癖:どっちでもいいよ、決めていいよ、(沈黙)
タイプ9の人は、一緒にいるだけでホッとする、まるで大自然の中にいるような癒しオーラを持つひとが多いです。男女問わず体格ががっちり、痩せていたとしてもどっしり構えている感があります。人の意見に合わせること苦なく大抵のことは受け入れられます。
決断を迫られたり、意見を求められるような葛藤や緊張の状況におかれることが何よりのストレス。腹の中にしまい込んだストレスが、反応しない・動かないといったストライキ的に怒りを表現します。
我慢強く、平和的・調和的なタイプ9の忍耐力が切れた時は、驚くほどの大爆発を起こすことがあります。